大阪地方裁判所 昭和37年(モ)2660号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判旨〕「大阪地方裁判所昭和二七年(行)第三〇号の二農地売渡不服事件記録によると、同地方裁判所第三民事部は、本件忌避の申立がなされた昭和三七年一一月一八日より後である同月二一日午後一時の右農地売渡不服事件の判決言渡期日において、右事件につき忌避を申立てられた裁判官前田覚郎、裁判官野田殷稔および外一名の裁判官が関与のうえ忌避申立前の同年一〇月一〇日終結した口頭弁論に基いて判決を言渡したことならびに右判決原本には忌避を申立てられた三裁判官の署名捺印があり、判決の評議、判決書作成等の判決内容の確定に右三裁判官が関与したものであることが認められる。しかし右判決内容の確定がはたして本件忌避申立前であるのかまたはその後であるのかについては明らかではなく、もし前者であるとすれば、忌避申立をしてみてもすでに確定した判決内容に何の影響もない点で利益を欠き排斥を免れないわけであるが、一応申立人の利益のために後者の場合であるとして、判断を進めることにする。
ところで、裁判官に対する忌避の申立は、その裁判官が担当する事件につき終局判決があると、当然その理由を失い、忌避申立は棄却を免れず、他方上訴審が原判決に対する上訴の理由として主張された忌避の理由の有無を判断すべきものとする判例(大審院昭和五年八月二日決定)があるけれども、この見解に従うと、上訴審でなされる忌避の理由についての判断は、原判決における判決の手続ないし訴訟手続の違法を判断する過程でなされるものであるから、忌避の申立に対する裁判としての効力のないことはもちろん、忌避の理由があると判断されたため原判決に判決の手続ないし訴訟手続の違法があることを理由に、原判決が取り消されて原審に差し戻されても右差し戻し判決の拘束力は、理由のある忌避申立がなされているにもかかわらず忌避を申し立てられた裁判官が終局判決その他の急速を要しない行為をしたことをもつて違法とする判断について認められるのにすぎないのであつて、忌避せられた裁判官の職務執行排除の効力を生ずるものではないから、当初の忌避の申立が、すでに本案判決がなさたとの理由により当然排斥せられたその裁判が確定しているかぎり、上訴審で右忌避理由ありと判断された原審の裁判官でも右差し戻し事件に関与することが許される結果となり、実際上不都合である(民訴四〇七条三項は、控訴裁判所より差し戻しを受けた事件には適用がないから、同条によつては原審裁判官の関与を排斥することはできない)。また、忌避の申立に対する裁判が民訴三九条に定める裁判所の専管事項とされている法意に照らすと、原判決における判決の手続ないし訴訟手続の違法を判断する必要上行なわれるにもせよ、上訴審が忌避事由の存否について判断することは妥当ではなく、むしろ右法条に定める裁判所の判断に委ね、その決するところに従うべきものというべく、従つて忌避申立についての管轄裁判所は、忌避の申立後終局判決のなされたときでも、忌避の申立につきその理由の有無を審理して裁判するべきものと解するのが相当である。)